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Myotubularin-related protein 6 (MTMR6)の
Rab1Bによる制御機構の解明


Phosphatidylinositol 3-phosphatase myotubularin-related protein 6 (MTMR6) is regulated by small GTPase Rab1B in the early secretory and autophagic pathways.
Mochizuki Y, Ohashi R, Kawamura T, Iwanari H, Kodama T, Naito M, Hamakubo T.
J Biol Chem. 2013 Jan 11;288(2):1009-21

PubMed
doi: 10.1074/jbc.M112.395087

fig1ホスファチジルイノシトール (PI)は、細胞内の膜表面にあるリン脂質で、そのリン酸化の状態を識別して結合する蛋白質の局在を調節することで、細胞機能を制御していると考えられている。Myotubularin (MTM1)とそのホモログであるmyotubularin-related protein (MTMR)sは、細胞内小胞輸送やオートファジーに関わることが知られる、PI(3)PとPI(3,5)P2の3位を特異的に脱リン酸化するフォスファターゼである。MTMファミリー蛋白質は全部で16個の酵素から構成され、基質特異性に違いが無いことから、それぞれの活性が何らかの調節機構によって制御されていると考えられる。我々は、MTMR6とMTMR7がMTMR9に結合することを発見したことから、今回さらにMTMR6の調節機構についての解析を行なった。

fig2まず、我々が開発した、バキュロウイルスディスプレーを用いた抗体作成法によって、MTMR6に対する高親和性のモノクローナル抗体を作製した。その抗体を用いて免疫染色を行ったところ、MTMR6が ゴルジ体の近傍に集積していることが明らかとなった。このMTMR6の局在のメカニズムを明らかにするために免疫沈降を行い、ショットガンプロテオミクス解析によって、MTMR6の局在を調節する蛋白質を探した。その結果Rab1BがMTMR6のGRAMドメインと弱くあるいは一時的に結合し、MTMR6をゴルジ体近傍に集積させていることが分かった(図1)。さらには、MTMR6が小胞体-ゴルジ体間の蛋白質輸送に抑制的に働いていることが分かった。オートファゴソームはオメガソームと呼ばれる小胞体上の構造から生じることが最近報告され、DFCP1というPI(3)P結合蛋白質が、オメガソームのマーカーとして用いられる。我々は、DFCP1を過剰発現する細胞で、管状の異常なオメガソームが形成されることを発見し、さらにその形成がMTMR6とRab1Bのノックダウンによって有意に抑制されることを発見した(図2)。管状オメガソームは、過剰なDFCP1がPI(3)Pに結合することによって形成されることから、MTMR6とRab1BはオートファジーにおけるPI(3)Pの調節にも関係していることが明らかとなった。

fig3GRAMドメインは他のMTMファミリー蛋白質でも保存されていることから、他のMTMファミリー蛋白質もRab蛋白質による制御を受けている可能性がある。本研究においてMTMR6のGRAMドメインの機能が明らかになった(図3)。